猫の初恋
あ、そか。
単に猫だから可愛いってことだよね。
そこに深い意味なんてあるわけない。

人間の姿の私に対して言ったわけじゃないんだから、こんなにドキドキする必要ないか。

でも、一条くんてやっぱり綺麗な顔立ちだな。

……って見惚れてる場合じゃないんだってば。

一刻も早くお兄のところに行かなきゃいけないんだ。

とにかく、彼から逃げなければ。

そう思った矢先、また彼の手に包み込まれてしまう。

その上にコロンと転がる。

「今日はとりあえず俺のうちに来るか?」

「ニャニャニャイ」

行かない、行かない。

ブンブン首を横に振る。

「おまえを一匹ここに置いていけないからな。今日は一斉下校の日なんだ。すぐに誰もいなくなるんだよ」

そう言えば今日は水曜日だから部活も休みで放課後も残ってちゃいけないんだ。

先生達もすぐに帰るし、そしたら門が閉められてしまう。
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