猫の初恋
彼の家
ドクンドクン

あれ、この音は何?

ここはどこだっけ?

目が覚めた時、今自分がどこにいるのかすぐにはわからなかった。

白いコットン生地の袋の中みたいな。

狭くてあったかくて心地いい。

猫は狭いところが大好きなんだよね。

ふと見上げれば、一条くんの顔と雨上がりのような曇り空が目に映る。

「ニャ」

周りの生地に爪を立てて這い上がると、そこが一条くんの制服の胸ポケットの中だったことにようやく気がついた。

そっか、この音は彼の心臓の鼓動だったんだ。

私いつのまに眠っていたんだろう。

保健室のベッドの上で彼に頭を撫でられたところまでは覚えているんだけどな。

疲れていたし、ついつい気を許してしまってたのかもしれない。

眠ってしまった私をポケットにいれて、彼の家まで連れて帰ってくれているところかな?

「目が覚めたか?ちょうど着いたよ」

「ンニャ?」

「ここ俺んち」
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