猫の初恋
彼の手のひらが近づくと、ピョンと飛び移った。

目の前には、広々としたガレージと3階建ての白い建屋。

すると薬品が混ざった匂いが鼻先を掠める。

(一条こどもクリニック)という看板が掲げられていて、ちょっとビックリ。

それじゃあ、彼の両親のどちらかがお医者さんってことかな?

ちょっと意外、一条くんてお医者さんの息子にはとても見えないんだもん。

しかも小児科ってイメージじゃないし。

どちらかと言えば子供なんて苦手ってタイプだと思ってた。

そんな失礼なことを思いながら、彼をまじまじと見つめるとまた人差し指で頭を撫でられた。

「親父の病院だ、家はこの奥にあるんだ」

そっか、彼のお父さんがお医者さんなんだ。

「ニャア」

彼の言う通り病院の裏側には2軒の家があった。

お洒落な新築の一軒家と古いけど趣のある一階建ての平屋。

一条くんは平屋のほうへ足を向けた。
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