猫の初恋
家の中に入ると、お線香の匂いが鼻をくすぐった。

この雰囲気って祖父母の家に似てる気がしてちょっと懐かしくなる。

彼は一階の和室にある仏壇の前に腰をおろすと、お焼香をあげて手を合わせた。

仏壇には彼のおじいさんかなって感じの人の写真が置いてある。

目鼻立ちが一条くんとそっくりでダンディーな雰囲気。

畳の上に降ろされていた私はそっと彼の横顔を見上げた。

ぼんやりした表情で写真を見つめる彼は学校でのクールでツンツンした雰囲気とは全然違う。

「じいちゃん、ただいま」

そう言ってちょっぴり切なそうに目を伏せて吐息を吐く。

「って言っても返事は返ってこねーよな」

あ……。

そんな姿を見たらなんだか私まで胸がキュッと締め付けられてしまった。

彼が今にも泣いちゃうような気がして心配になったんだ。

「ニャウニャウ、ニャウニャウ」

どうしちゃったの?そんな寂しそうな顔しないで。

注意を引きたくて彼の膝に背中を押し付けた。
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