猫の初恋
でも仕方がないよね、そんなの男子から言われ慣れてないもん。

ましてや相手はこんなイケメン。

ふとキッチンの窓を見れば、オレンジに染まる夕焼け空が目に映った。

私も彼も同じようなオレンジ色。

「まいったな、手放したくなくなりそうだ」

眩しそうに目を細める彼が、そんな甘いことを言う。

でも私、明日には家に戻らないといけないよ。

「ニャア」

互いを見つめ合っていたその時、玄関の方からガタッと音がした。

「ただいまー、千颯帰ったわよ」

「あ、ばあちゃんだ。料理教室の先生をしてるんだ。面白い人だよ」

彼は私を胸ポケットに入れて、玄関へ足を向けた。

「おかえり」

「ただいま、千颯(ちはや)」

玄関にいくと、彼のおばあちゃんが食材の入ったビニール袋を両手に下げていて、一条くんはすかさずそれらを持ってあげていた。

「ありがとうね」

ニコッと笑った顔が凄く優しそう。

おばあちゃんと言ってもまだ若々しい印象で品があって整った顔立ち。

紺色のお洒落なワンピースがよく似合ってる。

さすが一条くんのおばあちゃんだな。
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