猫の初恋
だって、それは私達を守るために必要なものだから。

私のためを思って言ってくれてるのが痛いほどわかる。

「ニャ……」

私は一条くんにせめて最後のお別れの挨拶がしたかったけど諦めて、母にコクッと頷いた。

「帰ろう、すず」

眠ってる一条くんの方をもう一度見て、心の中でそっと御礼とお別れをした。

一条くん、猫の私を助けてくれてありがとう。また明日学校でね。
その時は猫宮すずとして。

だから、バニラとしては、さよならかな……。

たぶん猫の姿では2度と会わないと思う。

一刻も早く、人の姿に戻りたいと思っていたのに予想外の早いお別れに、私は複雑な気持ちになってしまったんだ。
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