猫の初恋
彼女は困ったように手を振って優しく笑ってくれた

はあ、やっぱり花音ちゃんの笑顔は癒されるなぁ。

花音ちゃんを嫌な気持ちにさせたくないし、絶対に探し出さなきゃってひそかに心に決めた。

よし、またあとで保健室に探しに行こう。

そして、もうひとつ別に気になっていたことがある。

朝から一条くんの姿が教室になくて心配していたら昼休みになってようやく登校してきたんだ。

昨日母からもう一度「これ以上は学校でも彼に関わらないように」ってきつく釘を刺されたんだけど。

朝起きたら隣で寝ていたはずの猫がいなくなっていて、彼がどんなにびっくりしただろうと思うと申し訳なくなる。

席についた彼をこっそり盗み見る。

その端正な横顔はいつも通りクールで何を考えているのかよくわからない。

彼のことをチラチラ横目で見ていたら、パッと視線がぶつかった。

わわっ、どうしょう。

だけど、すぐに向こうから逸らされちゃった。

あ……そうだよね。
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