猫の初恋
何か少しでも手掛かりが欲しくて尋ねてみた。

「シュシュってなんだ?」

「ええっと、髪をくくる毛糸を編み込んだゴムなんだけどね」

「ピンクって……あっ、そういえば」

彼は何か思いあたることがあったみたいで、制服のスラックスの後ろポケットに手をやる。

「そのシュシュってこれか?」

彼の手のひらにあるのは私の探していたピンクのシュシュ。

「わあっ、それそれ」

思わず知らず小さく飛び上がった。

「昨日、ベッドの下に落ちてて。おまえのかと思って渡そうと思ってたけどあれからいろいろあって」

「そうだったんだね」

「悪い、俺すっかり忘れてた」

気まずそうに眉を寄せる彼を見て私は明るく微笑した。

「ううん。いいの。ありがとう」

「いや、マジで悪かったな」

「いいんだってば。一条くんも今朝はバタバタだったろうし」

「え?」

彼が怪訝そうに私を見たからあわてて話題を変えなきゃって思った。
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