猫の初恋
人と深く関わり強く執着することで、私が危険にさらされてしまうって心配しているみたい。

母の言いつけ通り、私はこれまで人間のお友達をつくらないように気をつけてきた。

ただでさえ引っ込み思案な性格だから友達を作りたくても出来なかったっていうのもある。

だけど、今回ばかりは母の目を盗んで花音ちゃんとだけは親しく話すようになった。

深く関われなくてもいいんだ、それでも。

花音ちゃんとたまにでもおしゃべりできるなら、学校に通うことが初めて楽しいって思えたの。

そんなことを考えながら歩いていたその時。

まっすぐな道の少し先にあるコンクリートの壁に誰かが背中をもたれて座っていることに初めて気がついた。

えっ、そんなところに人がいたなんて気づかなかった。

急いで駆け寄っていった。

長い足を投げ出しているその人は私と同じ中学の制服を着た男子。

ずっとここにいたんだろうか?

もしかしたら、さっきの兄の変身が見られていた?
< 8 / 160 >

この作品をシェア

pagetop