猫の初恋
「うん、わかってる」

確かに気が緩んでなかったかと言えば、嘘になる。

彼の人柄や行動にたまにときめいてしまうことがあるから。

踏み込んではいけないって思いながらも、気になってしまった。

「すず、お母さんは言ってなかっただろうけどおまえのあやかしの能力は特殊なんだ。扱い方を間違えたら大変なことになるかもしれない」

「え?あやかしの特殊な能力?でも私にはまだ力が芽生えてないはずだけど」

「そうだけど、すずは人に関わることで猫に変身するだろ?だからおそらく……」

兄が言いよどんでいるみたいだったから、不安になった。

「どういうこと?私はお兄とは違うの?」

兄は幻影をみせたり、人の心に干渉することができるあやかしの力を持っていて私も同じようにいつかそうなるんだって思っていた。

「おそらく違うと思う」

兄の神妙な面持ちに、コクっと息をのむ。

一体私にはどんな力が?

「お母さんはそんなこと言ってなかったよ」
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