猫の初恋
「すずには言えなかったんだろうな」

そこで兄は浅くため息をついた。

「古来の化け猫の能力なんだけど、最近は珍しいかもな」

あやかしの全盛期は約1000年も前と言われていて現代ではその力も弱くなってきているとは聞かされていた。

何世代も時を経て、人間と混ざり合っていくうちに退化していったらしい。

「すず、おまえの力は憑依タイプなんだと思う」

「へ?ひょういって?」

「取り憑くってこと」

「えっ、誰に?」

「それはわからない、おまえが本当に取り憑きたいと思った相手かもしれない」

「こ。怖いよそんなの、人に取り憑きたくなんてないもん」

取り憑くって言葉に、禍々しさを感じて恐ろしくなった。

自分がそんなバケモノじみたものになるなんて考えただけでも目の前が真っ暗だよ。

「そうだな、すずが怖がるからと思って母さんは言わなかったんだよ。だけど、俺はさっきのすずの様子をまじかで見ていたからきちんと伝えておいたほうがいいと思った」
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