猫の初恋
「は、はい」

彼に声をかけられて、そそくさと後を追いかけた。

彼の後ろを３歩下がってついていく。

振り返った彼は苦笑した。

「わるい、騒がれて嫌な思いさせたな」

「ううん、大丈夫だよ」

「猫、元気にしてるか？」

「えっ、うん元気……だよ」

なんと、彼は猫のバニラのことを思い出したのか。

おかしいな、兄が術をかけてからまだ３日しかたっていないのに。

意思が強い人でも半年は術を解くことは出来ないって兄は言ってたのに。

それほど、バニラのことが印象に強く残ってたってことかな……。

「どうして後ろにいるんだ、並んで歩けよ」

「う、うん」

おずおずと彼の隣にいくと、顔を覗き込まれた

「おまえ、やっぱ……」

「え、なに？」

「いや、なんでもない」

彼はクスッと笑って前を向いた。

何か言おうとしたのかな。

もしかしたら、また私の表情やしぐさがバニラと似てるとか思ってたりして……。
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