猫の初恋
そう思ったら背筋が冷たくなる。

「……っ」

彼は私に気がつくと、脇腹をおさえて苦しそうに息を吐きながら立ち上がった。

よく見れば、制服にところどころ砂がついているし、手の甲にはうっすらと血が……。

「だ、大丈夫ですか?」

「……」

慌てて駆け寄ったけど、ギロッと睨まれて足がすくんだ。

でも彼には見覚えがある。

「え、一条くん?」

「誰だ、おまえ」

低く鋭い声で言われて身体がビクッとした。

「わ、私猫宮すずです。1ヶ月前に転校してきて同じクラスの」

「ねこみや?」

彼に怪訝そうな目を向けられ凍りついた私。

クラスメイトだけど、おそらく彼は私のことを知らなそう。

そう言えば私って男子に喋りかけたことなんてほとんどないんだ。なんだか緊張しちゃうよ。

彼は転校生の私でも知ってるくらいの目立つ存在のクラスメイト。
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