猫の初恋
私がそう言うと、店長さんは何か思い当たることがあるようで手を打ち鳴らした。

「もしかして千颯くんかな?」

「はいそうです」

「一条病院の息子さんだよね?」

その店長さんは彼のことを知っているみたいだった。

「以前にも同じようなことがあったから」

「そうなんですか。あ、すみません。私急いでるのでこれで失礼します」

そう言ってペコッと頭を下げた。

一条くんのことが気になっていた私は店長さんとの会話もそこそこにスーパーを後にして、あたりを走り回った。

彼の匂いをたどるため、猫の嗅覚を最大限発揮しながら。

数名の男子生徒の匂いと混ざり合っているから、一緒に移動しているにちがいない。

一条くんはシトラスのような爽やかな匂いとかすかなお線香の匂いがしたはず。

どうか無事でいて……。

商店街を突っきったその先にある空き地で彼らを見つけた時には、心臓がバクバクと波打っていた。

彼のことが心配でたまらないからなのか走ってクタクタだからなのかわからない。
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