猫の初恋
とにかく、こんなところで、万が一でも猫に変身したら大変だ。

「一条くん」

胸のあたりを手でおさえながら、彼の名を呼んだ。

黒門中学の生徒3人いたうちの2人は地面に座り込んでいて戦意を喪失していた。

残りの1人は一条くんに腕を後ろで抑えられた状態でわめいている。

「は、はなせ、この野郎。一条、覚えておけよっ」

威勢がいいのは口だけで、ガタガタ震えている。

「俺は忘れる」

一条くんはクールに言ってその手を離した。

驚いた、噂には聞いていたけど一条くんてこんなに喧嘩が強いんだ。

すると、振り返った一条くんは私を見てぎょっとした。

「おまえ、なんでこんなとこにきてんだよ」

「だって、一条くんが急にいなくなるから」

「危ないだろ、巻き込まれたらどうすんだ」

「ごめん、でも心配だったから」

「……」

彼は一瞬気まずそうな顔をする。

「そうか、でも今すぐここから離れよう。こいつら仲間を呼んでたから」

「でも一条くんは強いから大丈夫なんじゃ?」
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