猫の初恋
追いかけてきたせいで、私が彼の足手まといになってしまった。

それが悔しくてたまらない。

「早く行け、猫宮」

そうだ、さっきみたいに誰か助けを呼びに行こう。それしかない。

絶対見捨てたりしないからね、一条くん。

そう決心した私は彼に深く頷いてから、ゆっくりと歩き出した。

黒門の不良達の横をすり抜けようとしたその時……。

「やっぱ、やめた。この子は俺がもらう」

番長は薄笑いを浮かべて私に手を伸ばしてきた。

嫌悪感で全身に鳥肌がたつ。

「ニャンッ」

その手を逃れようとすんでのところでひらりと跳躍した私。

番長の手は虚しく空を切った。

「お、わわわー」

番長は間抜けな声を出してバランスを崩して倒れた。

「ふええー」

「飛んだ?」

他の黒門生たちがザワザワと騒ぎ出した。

いけない、飛びすぎちゃった。

気づけば私は番長の身長よりも遥かに高く飛んでいたみたい。

とっさのことで制御できなかったんだ。

片足でストンと地面に着地したつもりが番長の背中に降り立っていた。

「ウゲッ」

カエルが潰れたような声を上げる番長。
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