猫の初恋
いまだ!って思った。

「一条くん、逃げよう」

振り返って大声を上げた。

大きく目を見開いたまま微動だにしない一条くん。

さっきの私の跳躍に驚いていたみたい。

でもすぐに我に返ると、勢いよくこっちに走ってきてくれた。

「猫宮」

手を伸ばしたら、彼は強く握ってくれた。

そして私たちは手に手を取りその場から駆け出していく。

「番長、しっかりしてください」

「お前たち追いかけろ、逃すな」

番長の苛立った声があたりに響き渡る。

必死に逃げ去る私に手加減なんてしている余裕はない。

おもいきり、太ももを高く上げて地面を蹴り上げた。

「猫宮」

私の方が半歩早いけど、一条くんも並みの速さではない。

きっと運動神経が抜群にいいに違いない。

心持ち彼を引っ張るような形で駆けていく私。

「こっち」

五感を最大限に働かせて、抜け道を探しながら走った。

「待て、逃げるなー」
「追い詰めろ」

いきり立った黒門生達が目を吊り上げて追いかけてくる。
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