孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
ちがう、ちがう。
そんなことが言いたかったんじゃない。
お互いにぶつけ合って何がしたいの。
こんなのただの八つ当たりだ。
私は海真くんとだけはそれをしちゃダメなのに…。
「っ、ち、ちがう…っ、そんなこと思ってない…、でも、私には分からなくていいなんて言わな───、っ…!」
塞がれた、唇。
それ前に回った腕が後頭部を押さえていた。
期待も希望も抱けなかったファーストキスというものが、思ってもいなかった今に与えられている。
「っ…、ん…っ」
合わせるだけ。
私の反応を試すみたいに、重ねるだけ。
たったそれだけが人生で最大の甘さを味わわせてくるだなんて、知らなかった。
よく分からないけれど……涙があふれた。
ゆっくり離れて、そして一言目。