孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「そこの若いおふたりさん!ほら、いま焼けたばっかだから美味しいよ!」



するとそばにいた女性店員さんは、小さな鉄板のようなもので焼いていた何かを私たちに差し出してくる。

思わず受け取ってしまってから私は焦った。



「あっ、お金…!おいくらですか…?」


「なーに言ってんのさ!試食よこれは。無料に決まってるでしょ!」


「…え…、い、いいんですか…?ありがとうございます…!」



ぱくっと、小さく刻まれた何かを食べてみる。

これはハム……?


私が知っているハムとは厚さも弾力も物足りない感じはしたけれど、とても美味しかった。



「すごく美味しいです!」


「でしょー?これね、まず魚肉ソーセージをスライスして軽く炒めるじゃない?そこにこのタレでサッと炒めてハイ完成!これ1本で簡単調理よ?5分でできちゃうわ!」


「海真くんっ、これも買っていこう…!そのっ、ぎょにく?ソーセージも!」


「……まっじかーー…、この子いつかぜったい詐欺に引っかかるな…」



だって5分でこんなにも美味しいお料理が作れちゃうだなんて、これは魔法のソースだよ。

けれど満面の笑顔を向ける私とは反対に、どこか苦笑いぎみの海真くん。



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