孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「あの挨拶はなに…!?どうしたらあんなにも失礼なことが言えるの!!」
「…軽いジョークだよ。まさかあんな空気になるとは思ってなくて」
「…ふざけないで。あたしに不満でもあるの?あのねえ、子供には分からないでしょうけど、あたしがここに立つまでにどれだけの苦労があったと思っているの?」
叱るなら、せめて“母親として”叱って欲しかった。
ここでも仕事仕事仕事、あたしあたし、あたし。
仕事と娘のどっちが大切なの?なんて言うつもりはないけれど、これがあなたの間違いだらけの子育ての結果だよ、とは笑ってみたい。
「藤原!あなたもあなたよ。この子には徹底的に厳しくしていいと言ってるじゃない!」
「…申し訳ございません」
「代わりならいくらでもいるのよ。…それだけは覚えておきなさい」
藤原さんはどうしてこんな仕事をしているんだろう。
家政婦なんて奴隷みたいなものだ。
主人の機嫌を取って、身の回りのお世話をして。
大して給料は出されないと噂では聞いた。