孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「あっ、さっきも似たようなの買ったよね…!や、やめよう、ごめんね…」
「ううん?ぜんぜんへーき。ののちゃんが気になるのぜんぶ買っちゃお今日は」
「えっ、いいの…?ありがとう海真くん…!」
「………おれ頑張って稼ごっと」
魔法のソースと魚肉ソーセージというものをカゴに入れて、狭いなかでも海真くんは私の手を引いた。
そしていよいよ私たちの前に見えてくる光景。
「さあののちゃん。戦いだ」
「わ…、すごい…」
なんだろう、あれ…。
わんさかわんさかと、たくさんの主婦さんたちが集っている。
みんなが必死に手を伸ばしては、幾つかの段ボールを覗いているようなのだけど……。
「あのっ、ニンジンを……!わっ、きゃっ…!」
「邪魔邪魔!この時間はセールなんだからっ!あっ、もう!押さないでよ!」
「押してないわよ!ちょっと!そのニンジンあたしが取ったのよ…!」
「これは私よ!!横取りなんか許さないんだからっ」
賑わう奥様たちの集いになんとか混ざれたとしても、簡単にポーンと除け者。
詰め放題で100円だなんて、また夢のような数字を前にしているというのに。