孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「っ…、お買い物、」
「ふっ。ごめん、思い出させちゃったか」
「おっ、お買い物しなくちゃ…!」
あの夜も甘い吐息を吐きながらも、こんなふうに何度もあたまを撫でてくれた。
夢みたいな夜だったのに、あの日の熱は身体にしっかりと残っている。
「…可愛かったよ、ののちゃん」
耳元でそれだけを伝えてくると、カゴを持った海真くんは上手に歩けない私をやさしく誘導する。
後悔なんか、していない。
誰かに対する罪悪感だって、ない。
これは私が望んで求めたことなのだから。
「さっきの話だけどさ、たまにはバーでいっしょにバイトするってのは?前みたいに手伝いって形なら店長も許してくれるだろうし」
そして帰り道。
たくさんの袋を手提げて並んで歩く道は大変だけれど、もうちょっとだけ長くてもいいと思った。
「い、いいのかな…?」
「てかね、おれがののちゃんといる時間を多くしたいだけ」
私はもちろん日中は学校。
16時頃には家に帰って、海真くんもなるべく合わせて学校に行ってくれる。