孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




あのバーは昼間はカフェ営業をしているらしいけれど、海真くんは夜のほうが演奏メインで稼げると言っていた。


なので実質ふたりでゆっくりできる日といえば、海真くんが気分でアルバイトを休む日のみ。



「私も海真くんといる時間、増やしたい。アルバイトもすごく楽しかったから…」


「ん、店長にも話しとくよ。でも今日はゆっくりしよ?ののちゃんの手料理を食べるっていう超重大イベントあるもん」


「ふふっ。うん」



滅多に料理をしなかったというキッチンに、調理器具が揃った。

初めて誰かに振る舞う手料理は何にしようか迷ったけれど、私はとある1品だけはぜったいに作ろうと決めていたりもして。


そのための、ニンジンとジャガイモ。



「……肉じゃがだ。え、めちゃくちゃ日本の家庭料理きた。ごめん、見たことも聞いたこともない料理想像してたわおれ」


「うん。いろいろ調べたら…男の子はそういうものが好きだって。でもなんか組み合わせがおかしくなっちゃって……あっ、もしかして嫌だった…?」


「嫌ってなに?その日本語がよく分かんない謎。…すっご……。なんか、あったかい家って感じすんね」


「…うん」



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