孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
肉じゃがと、昼間のスーパーで試食した例の5分のお料理をさっそく作ってみた。
不思議だったのは、昼間食べたもののほうがやっぱり美味しかったこと。
でも初めて作った初めてのお料理は楽しいものだった。
あとはベビーリーフにオレンジと生ハムを飾ってシーザードレッシングをかけたサラダ、それからミネストローネも。
「机ってこんな狭くなるんだ。…エプロンも似合ってるし」
「あ、ありがとう…。これから毎日つけるね」
「うん。…毎日見たい」
私がいま身につけているエプロンは海真くんが今日にも買ってくれたもので、私が着ているところを目にしてはカシャッと何回か響かせていた。
そしてひとくち、まずは肉じゃがを口に含んだ海真くん。
「……うまい」
「ほんと…?」
「うん。すげえうまいよ。肉じゃがなんて何年ぶりだろ…、誰かの手料理も懐かしーや」
心臓が掴まれたように、苦しい。
愛しくて愛しくて仕方ない気持ちが溢れて、今にも抱きしめたくなる。
どうして私が泣きそうになっているんだろう…。
この小さなワンルームに広がった温かな香りに、私たちの孤独が少しだけ和らいだような気がした。