孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「呑みすぎだよおばさん。それが余計に自分のイメージ下げてるって分からない?」


「…だまれ海真。だれがおばさんよ、まだピっチピチのハタチなんだけど?」


「あーおれ、ひとに迷惑かける人間はみんなおばさんって呼んでるから」


「……こっんのクソガキ」



どうやら海真くんともお知り合いなようで、ここのお店の常連さんなのかな…。

ポツリポツリとお客さんが行ったり来たりをするなかで簡単なお手伝いをしながら、私は小耳を傾ける。



「てかさあ、生意気すぎない?あんたなにしれっと可愛い女の子連れて来ちゃってんの?」


「ね。おれの奥さん」


「は?まじで?超おめでと」


「超ありがと」


「へっ、いや…!あのっ、私は奥さんではないです…!」



今さっきまでは言い合っていたというのに、今度は意気投合してハイタッチなんかをしているふたりへと、なんとか訂正を入れる。



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