孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「ののちゃん、もっとこっち」
「ひゃ…っ!わっ、あ…」
「…そんな声出されると無理なんだけどおれ」
「む、むり、って……?」
「…寝るの、もうちょっと遅くさせてもいい?」
「っ…!!」
「…ってこと。……明日も学校だから、今日はキスで我慢する」
いろんなものがふたりぶんに変わったとしても、ベッドはひとつ。
私だけに見せる顔というよりは、私にしか見せない顔を独り占めできる時間だ。
ちゅっ、ちゅっと、いろんな場所に響かせられる甘い音。
「おれ自分がこんなに独占欲つよいとか、知らなかった」
もう少しお金を貯めたら今より広いところに引っ越そう。
ここは繁華街が近いから音もうるさいし、もっと静かで安全なところにいこう。
その婚約者が追っては来られない場所に───、
「…やばい逆効果かも。どうしよののちゃん、おれ眠れない」
「きょ、今日はキスの日…だから」
「あ、なんかそーいう日ができちゃったんだ。…かわい」
これでいいという納得と、このままじゃダメだという葛藤。
なにも考えたくないから、今日も私は海真くんの腕に甘える。