孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




そうだ、少し前に藤原さんに聞いてみたとき。

「遠坂の名が使えることは、いろんな場面で助かります」とか言って、堂々とありえない発言をしていたっけ…。


いい人でもないんだ、この使用人だって。



「まあまあ、僕は面白くて好きでしたよ」



コンコンと、ノック音と一緒に控え室に入ってきた男がひとり。


彼は財前 一朗太(ざいぜん いちろうた)という、23歳の婚約者。


17歳の私は来年18歳、そして財前さんは実家の会社を継ぐことが決まっている。

ちょうどいいだろうと、両家では合致しているらしい。


なにがちょうどいいの、まだ私は高校生だよ───という意見など、彼らにはどうだっていいのだ。



「ごめんなさいねえ。財前くんも忙しくしているというのに、この子ってば本当に…」


「はは。乃々も年頃ですから、反抗期くらいあって当然です」



なにを分かったようなことを。
私はあなたと結婚するつもりなんてない。

あなたとするくらいなら………飛び降りてやる。



< 12 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop