孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
そうだ、少し前に藤原さんに聞いてみたとき。
「遠坂の名が使えることは、いろんな場面で助かります」とか言って、堂々とありえない発言をしていたっけ…。
いい人でもないんだ、この使用人だって。
「まあまあ、僕は面白くて好きでしたよ」
コンコンと、ノック音と一緒に控え室に入ってきた男がひとり。
彼は財前 一朗太(ざいぜん いちろうた)という、23歳の婚約者。
17歳の私は来年18歳、そして財前さんは実家の会社を継ぐことが決まっている。
ちょうどいいだろうと、両家では合致しているらしい。
なにがちょうどいいの、まだ私は高校生だよ───という意見など、彼らにはどうだっていいのだ。
「ごめんなさいねえ。財前くんも忙しくしているというのに、この子ってば本当に…」
「はは。乃々も年頃ですから、反抗期くらいあって当然です」
なにを分かったようなことを。
私はあなたと結婚するつもりなんてない。
あなたとするくらいなら………飛び降りてやる。