孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




そのとき、タタタタッとこちらに近づいてくる足音が聞こえた。



「っ…!」



ぜんぶを丸々と隠してしまうように、海真くんは私を抱きしめる。


しかし足音は数人。

誰かが誰かに追われているようで、そこまで走れる人じゃないはずだ財前さんは。



「あっんの野郎…!!オレの財布パクりやがった……!!」


「もう諦めよーぜ。どうせそんな入ってねえだろ」


「馬鹿ッ、ずっと必死に貯めてたポイントカードが入ってんだよ!!くまちゃんポイント6000円分だゴラァ!!!」


「……可愛いかよおまえ」



しばらくすると再び足音と声は消えてゆく。

笑っていいのかダメなのか分からないなか、まだ残る緊張を感じながらも私たちは顔を見合わせた。



「んんッ…、かいまっ、くん…っ?」


「……ごめん。なんか、気ぃ抜けた」



なぜかもう1度とキスが繰り返されて、私を閉じ込めながらも乱れた髪をとかしてくれる。



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