孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
お友達なんかじゃない。
海真くんは私のいちばん大切なひとだ。
あなたとは比べ物にならないくらい、ずっとずっと。
「じゃあ今週末。楽しみにしてます」
電話は切られた。
私がどう言おうと、海真くんも財前さんも止まることを知らないみたいにトントン拍子。
「行っちゃダメ…、私だけが行くから…っ」
「逆におれがののちゃんだけを行かせると思う?」
「だって…きっと自慢してくるだけだよ…、海真くんに見せびらかして、ただ優越感に浸りたいだけ…」
「うん。だろーね。…でも、ののちゃんはおれを選んだ。それを言っときたいんだよ、あいつにハッキリ」
私と正反対だったのは、置かれた環境なんかじゃなくて。
自由を自ら掴もうとする果てしない強さと、このまっすぐな目だ。
「実際は守れたものを守れないくらいなら、プライドなんか捨てられる。最初からそんなもの……そこまで持ってないのがおれだよ」
このときの私たちはまだ知らなかったんだ。
財前 一朗太という男は、欲しいものを手に入れるためならどんなことだってする極悪非道な男だということを。
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