孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「これじゃあ客も今日はそんな来ないんじゃない?」


「それがドリンク1杯で雨宿りに使う客も意外といるよ」


「え~、そういうのはもう搾り取れるだけ搾り取っちゃえ」



玖未さんとおれが出会った場所は、このバーではない。

じつはもっと前だった。


その頃から彼女はあまり変わっていなく、清々しいほど表裏がない性格。



「ってことでシュウさん、話し相手になってあげてもいいよ?」


「遠慮しとく。俺も今日は裏で発注作業があってな。ミト、店のほう頼んでいいか」


「はーい」



あっさり振られちゃったね、おばさん。

でも実をいうとクールな店長がここまで相手にしてる女性客って珍しかったりするんだよ。


まあ、教えてあげないけど。



「かわいい子だね、乃々ちゃん」



気分転換にピアノでも弾こうかと思いながらもスマホを操作していると、ちょうどメッセージを送った子の名前を玖未さんが出してきた。



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