孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「海色。あたしもうね、ハタチになっちゃったわ。…いいねえ、あんたはずっと18歳で」



日本酒に話しかける玖未さんは、姉ちゃんの親友だったひと。


おれも姉ちゃんも、お互い親戚には恵まれなかった。

おれは邪魔者扱いをされつづけ、とうとう中学3年から家を追い出された。


家賃も安い今のアパートを用意されて、生活費は出すからと条件つきで。


高校2年生になった今、そんな支援はとうとうなくなった。



『海真…、少しでいいから、海真のアパートで生活させてくれないかな…?』


『え、別にいいけど。なんかあったの?』


『…なんていうか気分?じつは学校あまり楽しくなくてさ、行きたくないんだよね…。親戚にも……いろいろ言われるの嫌だし』



一時期、いっしょに暮らしていた。


でもおれは手遅れになるまで知らなかったんだ。


学校に問題があったのではなく、実際は引き取られた親戚の家で酷(むご)すぎる扱いを受けつづけていたことなんて。

父親と同い歳くらいの親戚の男から、性暴行を加えられていたことなんて。


それから迎えにきた親戚の男に姉を引き渡してしまったことが───すべての失敗だった。



< 130 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop