孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
許されない恋




普段は座らないカウンター席で待っていた。

どうして今日が来てしまったんだろうと思いながら、一点ばかりを見つめていた私の前に。



「どう?少しはそれっぽくなった?」


「………すごく、よく、似合ってる…」


「あ、ガチの反応っぽいね。やった」



すこし前にバックヤードに店長さんと一緒に向かっていった海真くん。

待ち合わせ時間まで残り30分を切ったところで、現れた彼はピシッとスーツを着こなしていた。


いつも無造作に靡かせつつ香り程度にヘアワックスが付けられている髪は、今日はもっとキッチリと整えられている。



「いいじゃん海真!そんなスーツ持ってたの?」


「まさか。店長のお下がり」


「え~!さっすがシュウさんナイスなことするぅ!あんた身長もあるしルックスだけはいいんだからさ~。あっ、ちょっと写真撮らせて!」


「でもさ店長、ちょっと髪固すぎない?おれ落ち着かないんだけど」


「それがドレスコードってやつだ。今日ぐらい我慢しろ」



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