孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「ほら乗って。怒られてるから」
「あっ、うん」
流れるまま後部座席に押し込まれて、当たり前のように海真くんが続いた。
「ってことで、財前さんでしたっけ。安全運転お願いします」
悔しそうに唇を噛んで、投げやりに運転席に座った運転手。
これが海真くんなの。
あなたの嫌味だらけの行動だって平気で乗り越えて、私をホッとさせてくれる。
あなたのような無駄なプライドを持っていないから、こんなの誰も勝てっこないよ。
「ののちゃん、ラムネ食べる?」
「うん。たべる」
「どーぞ」
ラムネも、それまでは聞いたことも食べたこともなかった。
でも海真くんといっしょに暮らしてから食べるようになって、ひとつ10円単位の駄菓子だったり、好きなものがまた増えたの。