孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「ほら、玄関はこっちだ。乃々はわざわざ説明しなくても分かるね。何回も来ているから」
いちいち会話に混ざってくるの、やめて欲しい。
車のなかでも私と海真くんが話していると、強引にも割り入ってきた。
それに何回も来ている、だなんて。
何回かしか来ていない、の間違いだ。
「じつはね、今日は僕のほうも知り合いを呼んでいるんだ」
慣れた様子で豪邸内に案内されて、すぐ。
財前さんが知り合いと指したひとりの女性は、優雅に微笑んできた。
「初めまして、留美子(るみこ)っていうの」
「留美子はイギリスのクロッスフォード大学を首席で卒業していてね。まあ、僕の次ってところかな。仕事でも度々と世話になっているんだよ」
「ふふ。仲良くしてね」
私も初めて目にするひとだ…。
私たち3人だけじゃないことに胸を撫で下ろしつつも、やっぱり不安は付き物。
なにに対しても疑ってしまう。