孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
飲めばいいんでしょう。
これで何か問題が起きたなら、私たちは警察に通報することができる。
たとえそうなったとしてもお金で解決させようとするのが財前 一朗太なのかもしれないけれど、破談にできるのなら少しの物的証拠も欲しい。
「きゃっ…!」
けれど勢いで傾けた湯飲みは寸前で奪われた。
そしてゴクゴクゴクと、海真くんが飲み干してしまう。
「これで…いいんだろ…、こんなこと言うのもなんだけど、いつもおれが行ってるスーパーのパック茶と……まったく変わんない───………よ」
「海真くん……!!」
そして彼はガタッと椅子から崩れ落ちた。
意識はすでに朦朧としているんだろう。
駆けつけた私に伸ばしかけた手は、くたりと脱力する。
「なにを…、なにを入れたの……っ」
「くそっ、留美子……!いいから乃々にも飲ませるんだ…!!」
「でもっ、これは筋弛緩薬(きんしかんやく)よ…!睡眠薬より効果も浅いわ……!」
「ないよりマシだ…ッ!岡林も乃々を押さえろ…っ!!おい岡林…!なにをボサッとしているんだ!!」