孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
すぐに私の身体も押さえつけられる。
本当であれば私に即効性の睡眠薬を飲ませて、海真くんには筋弛緩薬を飲ませるつもりだったのだと。
「やだっ、はなして…っ!海真くんっ、かいまくん……っ」
「いいから飲め…っ!!きみがいけないんだッ、僕以外の男を見る君がいけないんだぞ……!!───っ!?…なぜだ…、」
私に強引にでも飲ませようとする財前さんの腕を掴んだのは、眠っていたはずの彼の手。
「…やめ……ろ……、おれ、の………、さわる……な……」
やめろ、やめろ、と。
意識が半分も残っていないなかでもガッシリと掴んでいる。
そこまでして私を守ってくれようとしているの……?
ぶわっと溢れた涙。
けれどそこにとうとう他の使用人たちもやってきては、全員が私たちの敵だった。
「んっ、…んーーーッ!!……っ」
何人もの悪魔たちに押さえられるなか、私の口内に流し込まれたお茶。
海真くん、かいまくん。
やっぱりそのスーツじゃあ、動きづらかったよね。
髪も落ち着かなくて、ずっと気にしてたもんね。
海真くんは意外とたくさん食べるから、こんなちまちましたお料理なんかじゃ足りないよね。
「…かいま……くん……」
なんだか私、
あなたの奥さんみたい────……。
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