孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「きみがいけないんだ…、きみが、きみが僕じゃない男を…」
だめ、動かない。
全身がすごく軽くて重いの。
睡眠薬ではないから意識はあったとしても、自分の身体じゃないみたいにうまく言うことを聞いてくれない。
「僕たちは婚約者だッ!だからっ、これは強姦でもなんでもないからな…!」
めまいがする。
ぐらぐらと視界が揺れて、声が近くなったり遠くなったりと、全身が痺れたようにちからが入らない。
「やめて…っ、触らないで……っ!」
「なっ、まだそんなことを言っているのか…!!僕のことが嫌いか…!?嫌いなのか!?」
「………い、」
「な、なんだ…?」
こんなやり方をしてきて。
こんなふうにしか人を愛すことができなくて。
自分が与えて“あげている”のだから、同じくらい返されるのが当たり前だなんて。
そんな、そんなあなたのことなんか。