孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「────だいっっきらい……!!」



パシンッッ!!と。

おもいっきりひっ叩かれた頬。


それからポタポタと涙が落ちてきては、肩を激しくガクガク揺さぶられる。



「どうしてだよお……っ!!!どうしてそんなことを言ってくるんだよお……!!僕は…っ、僕はきみのためなら家を買うことだって宝石を買うことだってっ、プライベートジェットで旅行だって…!ぜんぶぜんぶ叶えてやれるんだぞ……!!」



そんなものが欲しいわけじゃない。

お金があれば買えるものだなんて、なんにも欲しくない。


じゃああなたは、目の前で高い場所から飛び降りようとしている女の子を見たとき。


それ相当のお金を払われなければ助けないというの?



「いたい……っ、痛い…っ」


「僕だって今まで何度もきみの尻拭いをしてきた…!!ああ僕のほうが痛いさッッ!!」



ちがう。

叩かれた頬っぺたでも、掴まれた肩でもない。


痛いのは…………心だ。



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