孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
こたえられない理由
「どう…かな?」
「もちろん大前提としてめちゃくちゃ美味しいんだけど…、食べ慣れてないからさ。うまく食レポできないってか」
「無理して食べてはない…?」
「ないない。一言でいうならね、非常にオシャレな味がする」
いつかに得意料理だと言ったアクアパッツァ。
さすがにご飯は合わないから、商店街のパン屋さんで買ったフランスパンに明太クリームを添えた。
ついでにスーパーで安売りしていたトマトを使ってモッツァレラのカプレーゼも。
「どっかの高級レストランにでも来てんのかな、おれ」
「ふふ。うれしい」
「…じゃー、結婚する?」
「………する」
私の返事に一瞬目を開いて、ふわりと優しく伸ばされる。
うつむいた私に覗きこんで、甘いリップ音がふたりだけの部屋に小さく響いた。