孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「クリスマスはいつもどうしてた?」


「私は……お母さんがいるアメリカで過ごしてたよ。必ず参加しないといけない集まりがあって」


「ってことは…今年も?」


「……ううん。今年は海真くんといたい」



ベッドのなか、頬を寄せて顔を埋める。

だんだん私も海真くんの匂いに染まってきているけれど、やっぱり海真くんからしか感じられないものがある。



「お母さんにも……もう会いたくない」



戻される。

会ったらきっと、どうにかしてでも戻される。



「…おれはねー、いつもバーでお客さんが今日くらいはってクリスマスソングをリクエストしてくるんだけどさ。ガン無視でいつもどおり弾くってことしてた」


「…ふふっ。海真くんっぽい」


「んでも今年はおれもののちゃんと過ごしたいから、店長には悪いけど…バイト自体を休むつもり」


「私はバーでみんなで過ごすのもいいなって思うよ…?」


「おれがやなの。せめてイブくらいは独り占めさせて」



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