孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「待て待て、オジョーサン」
「っ…!!」
背後から声がして、そのあと物音に気づいた。
「おれの貴重な休憩時間。さすがにそれは勘弁してくれって」
そう言いながらも、彼は慎重に私のもとへと近づいてくる。
もし誤って背中なんかを押してしまったなら、私は即座に落下するだろう。
「スカイダイビングするには暗すぎるし、命綱がないってのはプロよりプロじゃん」
「……………」
「きれいなドレス着てんだから、せっかくならもっと似合う場所に立ったほうがよくない?」
「……………」
「…骨、砕けて飛び散るんだ。衝撃で身体は90%切断されるし、もちろん顔なんて潰れてなくなるよ。そんな姿を家族たちに見せたいっての」
「こ、来ないで……っ」
「わかった、止まる。1コ聞いたからね、きみのお願い。ならおれのお願いも1コは聞かないとフェアじゃないだろ」