孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「海真くん、だいすきだよ」


「…おれ、ののちゃんに勝った」


「え…?」


「おれは愛してるから」



私は今日も彼に昨日より愛されて、恋よりもっと深い愛というものを知る。

けれど愛を知ると、その愛の大きさゆえに小さなきっかけが大きな問題へと発展してしまうこともある、と。



「聞いてくださいよマスター。おれ、すごい困ってることがあるんです最近」


「…なんの茶番だ」


「いやいやマスターって。あんね、いっしょに暮らしてる超かわいくて超愛しの女の子のことなんですけど」


「……………」


「なんかおれ、避けられてるみたい。どこで何やらかしたかもまったく心当たりもないんですよ。……ねえーーー」



テーブル席を拭いていた私に訴えかけるよう、わざとらしく天を仰いだひとりの男の子はカウンター席。


────さかのぼること、今から数日前。



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