孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「やってんの」


「えっ…」



初対面ではなかった。

すこし派手な上下スウェット姿をしたパーマがかった髪の女性。


隣の103号室から出てきて、相変わらずサンダルを履いてどこかへ向かうのだ。



「や、やってる、って…」


「いっしょに暮らしてるの?ここのミステリアスボーイと」



しかし今日は、私と話すためにわざわざタイミングを合わせてきたと思っても間違いではなさそうだった。


ミステリアスボーイ……、

たぶんそれは海真くんのことを言ってる、よね…?


彼女がくいっと顎を動かした先は、102号室のちょうど私が出てきたドアだ。



「……はい」


「…ふうん」



なにかダメなことを言ってしまったかな…。

私を吟味するように見つめてはきたが、とくに引っかかった点はなかったようで心のなかで深い一息をついた。



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