孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「確かにモテそうな顔してるもんねえ、あの子。わりと家に女を連れ込むタイプ」



海真くんも言っていたけれど、このアパートは滅多に住人が引っ越さないから新しい住人も入ってこないのだと。

住み着きやすいんだろうね───と、彼は笑っていた。


いちばん新しいのは海真くんらしく、いま私に話しかけてきた女性もずっと前からいるようだ。


そして私は、彼女の何気ない言葉に引っかかる。



「………あの、今までにもあったんですか…?」


「え?」


「ここに……女の子を連れていたり、」


「……………」



そういえば私。
海真くんのことはあまり知らない。


あまりというか、ぜんぜん知らない。


今でも少し気になるのは、初めて私がこのお家に泊まったとき。

私といっしょにベッドで寝ることに対して彼はそこまで抵抗がなかったこと。


あのとき感じたモヤモヤした気持ちは、じつは今も持ってたり……する。



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