孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「…言っていいの?泣かない?」


「な、泣かないです」


「連れ込んでたわよ。まだ最初の頃にあんたくらいの若い女の子をね。でもわりとすぐ出ていっちゃったみたいだけど───って、泣かないって約束したでしょ!も~、ちょっとやだあ~」


「っ…、だって…っ」


「しょうがないんじゃないの、こればっかりはさあ…。あんたで最後にすればいいだけよ」



こんなことで泣いていたら、またお嬢様だなんだと言われてしまう。


こんなこと……?
ううん、“こんなこと”なんかじゃない。


お家に連れ込むってことは、そして通わせるってことは、それなりに深い仲だったということだ。

簡単に女の子を家に上げるような人じゃないと信じたい、私が。


………でも、初めて会った日に私はここのお家に上がったんだっけ…。



「うぅぅ~~……っ」


「ええ!ちょっとちょっと!あたしが泣かせたみたいになってるじゃないの……!アイスあげるからそこにしゃがみこむのだけはやめて!確信犯よ!」



< 173 / 335 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop