孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「…言っていいの?泣かない?」
「な、泣かないです」
「連れ込んでたわよ。まだ最初の頃にあんたくらいの若い女の子をね。でもわりとすぐ出ていっちゃったみたいだけど───って、泣かないって約束したでしょ!も~、ちょっとやだあ~」
「っ…、だって…っ」
「しょうがないんじゃないの、こればっかりはさあ…。あんたで最後にすればいいだけよ」
こんなことで泣いていたら、またお嬢様だなんだと言われてしまう。
こんなこと……?
ううん、“こんなこと”なんかじゃない。
お家に連れ込むってことは、そして通わせるってことは、それなりに深い仲だったということだ。
簡単に女の子を家に上げるような人じゃないと信じたい、私が。
………でも、初めて会った日に私はここのお家に上がったんだっけ…。
「うぅぅ~~……っ」
「ええ!ちょっとちょっと!あたしが泣かせたみたいになってるじゃないの……!アイスあげるからそこにしゃがみこむのだけはやめて!確信犯よ!」