孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
私だけじゃない。
彼には今までにもいた。
今までも同じようにここで一緒に生活していた女の子が。
「え、なんで?ののちゃん?」
「……今日から、ここでいいです」
「…やっぱそうだ。ご飯のときも相づちしてくれたの1回だけだったの知ってる?……おれ、なんかした?」
「いっしょに寝ない」と頑なに拒否をして床に体育座りする私へと、とうとう海真くんはベッドから降りてまで聞いてきた夜。
「…ののちゃん」
「………や、」
「…キスもだめ?じゃあハグは?」
「…や」
「やなの?まじで」
聞きたいけど言葉にしたくない。
答えを知るのが怖いから、だったら知らなくていいになる。
でも気になって心がえぐられての繰り返し。
「今日もご飯おいしかったよ?…あ、もしかしてパスタ箸で食べてたとこが気にくわなかった?どうしても許せなかった?マナー違反か、ごめん次からはフォーク使うから」