孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「喧嘩してるようには見えないけどな」



海真くんの相談を聞き流しながらも、店長さんは作業のついでのように答えていた。



「ね、寂しいからおれと一緒に来てはくれんの。かわいーでしょ。まあ……家では匠な技でおれを避けてくるんだけど。聞いてるかなオジョーサマ、もしもしオジョーサマー?聞こえてたらぜひ応答願いまーーす」



………そのわざとらしく言ってくるの、やめて。

今日も私は気にせずお店のお手伝い。



「てか、なんでこういうときに限っておばさんいないの?」


「しばらく仕事が立て込んでいるらしい」


「……なんやかんや言って情報は共有してるその感じ。もう付き合っちゃえばいーじゃん」


「俺はバツイチだ。一応は子供もいる」


「…………はっ!?!?」



さすがに私も勢いよく店長さんへと振り返ってしまった。

まあ子供は元嫁が引き取って、向こうは数年前に再婚してる───と、普段と変わらない表情と声で淡々と説明される。



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