孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。
「……何歳、とか。聞いていいやつ?」
「4歳」
「…なんで知らなかったんだろ……おれ」
「ミトがここにくる前に別れているからな。当たり前だ」
「いや……、そういうことじゃなくてさ…」
まさか店長さんは結婚だけじゃなく離婚も経験しているだなんて…。
あまり自分のことは話さない謎多き人だとは思っていたけれど、まさかまさかだった。
「向いてなかったんだよな、俺には」
「……店長さ、もっとおれたちに言ってくれてもよくない?なんかもう引っくるめて家族みたいなもんじゃん」
「それは俺からもお前らに言っとく。言いたいことはしっかり言い合ったほうがいいぞ。じゃなければ俺みたいになる」
店長さんが玖未さんの気持ちに応えない理由は、応えられない理由もあるんだ。
どうして断りつづけているんだろうって、じつは私もずっと気になっていた。
玖未さんと話しているときの店長さん、わかりづらいなかでもいつも穏やかな顔をしていたから。