孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




また私の手を強引にでも引っぱる。
悔しいけれど、この強引さは嫌いじゃない。

それどころかずっと待っている私さえいるのだ。



「いーから食べてみなって。ほらガブッと」


「こういうの食べたことないから…」


「食べればわかる。日本人で嫌いな人間はたぶんいないね」



それから海真くんは家ではなく、向かった場所は誰もが知っているらしいファストフード店だった。

隣にいる私がメニューを見上げているあいだには注文を済ませてしまって、目立たない端っこのカウンター席。



「ナイフとフォークは…」


「わかってないねえオジョーサマ。おれのなかではハンド・バーガー略して“ハンバーガー”なんだよ。これは手でわしづかんで食べるもんなの」


「でもそれって、お行儀が…」


「逆にここ来てナイフとフォークのほうがルール違反。店員さんにもハンバーガーにも喧嘩売ってるもん、それ」



…………よく分からない。

わからないけど、いろいろあったことで海真くんは強引さに磨きがかかっているようだった。


とりあえず私は今までの鬱憤を晴らすように、慣れないなかで掴んでガブッと噛みついた。



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