孤独なお嬢様は、孤独な王子様に拐われる。




「はい美味しい」


「………おいしい」


「この明らかにカラダに悪そうな味。でも、それがうまいんだよね」


「こんなに見た目も食べ物に思えないくらいぐちゃぐちゃなのに…」


「…うーわ。とんでもないことサラッと言っちゃったよ、このオジョーサマ」



ふふっと。

自分の失言に対してではなく、美味しさに笑顔があふれた。



「そしたら次ジュース飲むじゃん。口んなか一旦クリアにすんのね」


「うん」



海真くんの真似っこをするみたいに、ストローでおもいっきり。

しゅわっと口のなか弾けるグレープ風味の炭酸。



「はいそんでポテト」


「……おいしいっ」



サクッと音が鳴った。

周りはサクサクしていて、なかはホクホク。


そういえば店員さんは私たちに出す前に「ちょうど揚げている」と言っていたから、つまりこれは揚げたてなんだ。


すこしだけ待った甲斐があった。



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